2022春夏 オートクチュール
人体、とりわけ女性の身体は実体的な肉体であると同時に文化的象徴として、時の流れとともに理想とする肉体美の規範は変化してきました。 時には大胆な垂直性が、時には軽やかな水平性が強調され、解剖学上の人体の特定の部位が他の部位よりも注目されてきました。オートクチュール界のシステムでは、人体の美のへの追及はメゾンのモデルの身体に具現化されています。1人のメゾンモデルのボディをベースにすべてデザインされ、縫製され、抽象的でありながら現実のものとなっています。
クリエイティブディレクターのピエールパオロ・ピッチョーリは、オートクチュールのしきたりとあり方を見直す使命に駆り立てられました。それは現代社会の豊かさや多様性が作り上げた、絶対的なものなど存在しないはずの美の範疇に疑問を問いかける作業。今回のヴァレンティノのコレクション、Anatomy of Coutureは、理想的なボディを持つメゾンの1人のモデルではなく、体格や年齢が異なるバラエティに富んだモデルを通してイメージされています。ピエールパオロ・ピッチョーリはソフトでオープンな民主的スピリットと同時に過激なアプローチを持ち合わせて既存のプロセスを再構築し、コレクションを手掛けました。個々のモデルの身体的特徴と着用するドレスが調和し、ひとつになる。それは科学的、詩的な両面からの研究による、長いプロセスでした。彼の美学に対するメッセージはそのままに、心地よい表現で伝えられています。
全ての工程は体から始まり体で終わるように、モデルのボディに重点を置いています。ボディにタイトに沿わせたシルエット、またはボディから離しボリュームを持たせたシルエット。深いネックラインから垣間見える胴体と、思い切ったショート丈の裾からのぞく素肌。交互に混じりあう大胆な縦方向の遊びと軽やかな横方向のライン。ヴァレンティノのオートクチュールにおいてのスタイルコードが、断片的なものでなく何度も繰り返される対話のように、さまざまなボディフレームを通して一貫して表現されています。ドレスをデザインする人、仕立てる人、着用する人の間での入念な対話が、そのまま濃密なコレクションに落とし込まれています。
アプローチを変化させながら、失われることのない美しさと雅やかさ、伝統からの脱却の意思、詩的な解放感は探求され続けました。可視化された美の理想を内面的な美しさに昇華させながら、美は個人に品格をもたらしています。
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