パリのカフェで友人たちと席に座り、目の前で繰り広げられるシーンを眺めていた。きれいに着飾ったグラマラスな女性たちがストリートから大通りへと進んでいく。

通常であれば豪華で優雅な建物や、周到に準備された場所で行われるヴァレンティノのショーが「普通」の世界で行われるのを見たのはこれが初めてだったのではないだろうか。ピエールパオロ・ピッチョーリによるこのイマジネーションに富んだショーを見ながら、私は過去を思い出していた。

半世紀以上前、オーディエンスを魅了し、ヴァレンティノ氏がそのキャリアをスタートさせたフィレンツェのサラ ビアンカコレクションをはじめ、すばらしい瞬間は数えきれない。かすかに北アフリカを思わせるジュエリーを身にまとったマリサ・ベレンソン。モデルがまとったスカーレットドレスからのぞく脚。ひとつ確かなことは、現在のクリエイティブ ディレクターであるピエールパオロはヴァレンティノのコレクションをドラマティックにモダナイズさせたということ。

ショーは ‘ヴァレンティノ ランデヴー’ と題されていたが、これはむしろ未来へ歩みを進めるための改革なのではないだろうか？ ヴァレンティノ氏自身はストリートレベルでハイファッションを発表することはなかったのだから。

しかし私は間違っていた。完全なる過ち。目の前に、ヴァレンティノのアーカイブに由来する6つのドレスが現れた。女優であり、エルザ・スキャパレリの孫であるマリサ・ベレンソンがかつて着用したものをリメイクした、フロッグのようなスリーブがあしらわれたフレッシュホワイトのドレス。