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NOTES ON LOVE:
A POCKETBOOK
NOTES ON LOVE:
A POCKETBOOK
声優: 中尾隆聖
1 世界にはまだ未来があると感じさせてくれる感情はすべて、愛と関連している。
2 愛は天地創造が人間に与えた贈り物。受け取るかどうかは、あなた次第。
3 最良の愛は、私たちに自分自身について気づかせてくれる。
4 イチジクの白い汁、ザクロの種、ブドウについた露––––これらは全部、旬を迎えると愛になる!
5 トルコ語の「aşk(アシュク)」は、アラビア語の「aşeka(アシュエカ)」に由来するという。木に巻きついて成長し、食い荒らし、やがて乾燥させて生気を奪う、つる植物の名前。 自然は過ちを犯さない。
6 愛は史上もっとも耐久性のある題材。否定できない愛の力を理解しようと、何世紀にもわたって作られてきた詩、歌、物語、オペラ、小説、戯曲、映画を見て、この最古のテーマが決して古びないことに、驚かない?
7 一度しか愛さないという人は、心は一回きりの使い捨てだと思い込んでいる。
8 愛について書くとき、「愛には理屈を超えた理由がある」というパスカルの言葉は無視できない。
9 私たちは生きていることを実感するために、人生に思い出を求める。 愛もその手段のひとつだ。
10 自我は悪いことばかりではない。 良い愛とは、何より強い自我を必要とする。
11 愛とは人生における込み入った作業のこと。
12 私には心が二つある。ひとつは言葉が話せず、もう一方は私の通訳。
13 愛はいつも、読むに値する物語を残していく。
14 しばしば、愛は終わると文字にされる。
15 宗教に関係なく、愛があなたの宗派になる。
16 愛の熱に浮かされている間は、自分の骨すら檻のように感じられる。 魂は宇宙と混ざり合い、もう逃げられない。
17 心の扉には鍵がかかっていない。愛とは心が定期的に自動更新すること。それが愛の軌道。宇宙のリマインダー。
18 なかには素晴らしすぎて長続きしない愛もある。 だからこそ、幕引きのタイミングを知るべきだ。
19 あなたは自分の駅に停まらない電車に乗るのを待って、こう尋ねる。愛はどこ?
20 どんなに野蛮な愛でも、それなりのエレガンスは持ち合わせている。
21 愛は心が熱くなったときに差し出されるもの。 心を冷やさないようにしよう。
22 嵐のように突然止んでしまう愛もある。 どのように終わったのかもわからない。
23 報われない愛の大きな孤独は、どこへ行くにも一緒についてくる!
24 恋愛もしかり、二人の間の関係性はみんな、二組のカードを使う複雑なゲームやトリック。
25 疑う余地がなくなってから愛を肯定する心の動きは、疑念を生む。
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26 もしかすると、愛は生まれ変わりに過ぎないのかもしれない。感情や、過去に抱いた希望や期待が再び具現化されたもの。内なる存在の再生でもある。
27 愛は幻想だと言う人たちへ(あたかもこの世のものはすべて本物で、愛だけが幻想や欺瞞であるかのように)。
28 秋に別れると、傷はより深くなる。 参考文献『体験の歴史』
29 人間の体の何パーセントが水であろうと、愛も同じ。 水は命であり、渇くと枯れる。
30 愛とは、時にただ慰めを求めること。 人間は皆、その存在そのものが、慰めを必要としている。
31 大人を子供に変える愛は、子供を大人に変えると言えるだろうか?
32 自分たちの経験は人類共通だと思い込み、そのように名付けて定義するのは、根本的な欺瞞だ。 愛にもまた同じことが言える。 私たちは自分たちが乗り越えることはすべて、人類共通の体験だと思ってしまう。しかし時には、あるいはしばしば、類似性に欺かれているのだ。
33 外がすごく寒いと、愛は最高に暖かい場所になる。
34 決して閉じない心のノートもある。
35 恋愛における恐怖と勇気もまた、同じルールに従っている。
36 ケチな人が寛大になるなんて、私は一度も信じたことがない。それぞれの心の秤で皆の重みを計ろう。
37 愛は謎に包まれた経験だ。故に、失敗する人もいる。
38 愛は血の中に、涙は別れのためにとっておこう……いつどちらかが流れるか、時間はわかっている。
39 恋愛中は、高所恐怖症対策のためにお守りを必要とする人もいる。
40 愛に真理を求めるのは、心の弱い者には向いていない。
41 愛がある種の憎しみであることも、憎しみがある種の愛であることもある。天秤の椀の位置は移動し続けている。何の重さかわからない釣り合い錘だ。
42 愛も死も、ある日突然現れる。それは、その背後に人生があるから。 これからの道、あるいは残された命。
43 恋人ではなく、自分の書いた物語の主役を一緒に担ってくれる役者を求める人もいる。 そうした人の恋愛が、メロドラマや恋人たちの撮る写真に似ているのはそのためだ。 似たような例––––愛を求めることに夢中になっている人はただ、一人芝居に出てくれるエキストラが欲しいだけ。
44 ある人が愛と呼ぶものは、簡単にあしらえる心のときめきだ。
45 愛には秘密の交渉がある。
46 私たちが恋に落ちるとき––––まさに頭からつま先まで恋に浸るとき––––あらゆる魂の欠陥や破損した部分、それから自分の存在のあらゆる欠点が明るみに出る。
47量子物理学のどこに、愛はあるのだろう。
48 ある愛の詩は楔形文字で刻まれている。そして心の壁には爪の跡が。
49 恋に落ちるという行為は、夢、幻想、幻覚を伴う。そして、よくわからない空虚さを、期待という曖昧な線で描かれたぼやけた絵で埋めようとする。
50 ある種のラブソング、恋愛小説、恋愛映画は、奴隷貿易をしているような印象を与える。
51 人生や芸術で出会う一連の恋人たちのなかに、連続殺人犯を思い起こさせる人がいるのと同じように。
52 新しい恋は、本の改訂版や増補版のようなものだと思う人もいる。 どちらがひどいかは、決められない。
53この部分に言及する人はほとんどいないが、愛とは知識でもある。しかも、他の方法では得られないような知識。
54 これまでの経験が、あなたをある人のところへと導く。彼が現れると、「ほら、いた!」となる。あとは、その人が運命の人かどうかを見極める時間。 結局、判断を誤るのは人間なのだ。
55 愛はそれぞれ、それを見る人の伝説。 個人的な伝説。 すべての伝説がそうであるように、自ら再生産しようとする。
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56 同じ過ちを繰り返さないようにしたいと思わない人はいないだろう? でも愛となると、長年の叱責に耳を傾けた心はあるだろうか? ときどき私たちは、人生に同じ映画をもう一度見させられる。たとえ何度もリメイク版に失望させられたとしても、明らかに 私たちはその映画を気に入っている。
57 これだけは言っておくけれど、愛の復讐と呼ばれるものがある。でも、どんなものかなんて訊かないでくれよ? ただそれだけ知っておけばいい、それかいざというときに思い出すから。いいね?
58 詩、歌、小説、映画には、見るに値する愛が描かれている。どうせ他人から聞くことになるのだから、他は気にしなくていい。
59 愛そのものは慈悲深い。悪意は恋人たちのもの。
60 愛は死の巧妙なトリックである。 私たちにウィンクするその顔。 私たちは生きているときではなく死ぬときに、どこでそれを見たか思い出す。
61 恋をしようと決意するのと同じくらい、恋愛に対する抵抗にも直面した。頑固さは多様性に欠けていて、みんな似かよっている。
62 未来への希望というスリルは、やがて思い出というほろ苦い慰めに取って代わられる。私たちは、昔の恋や、恋愛だと思って経験したこと、愛だと思っていたことを、比類のない感情と一緒にして、新しい恋として作り直す。 やがて誰もが、若かりし頃の自分に恋をするようになる。
63 偶像崇拝の痕跡を残す愛もある。
64 愛とは、決して希望を捨てないこと。信頼、献身、信念は、希望が必要であることや、希望がある可能性を正当化している。愛は希望と密接な関係にある。だから、「愛」と 「革命」という言葉は相性がいい。
65 真の愛、真の詩、真の芸術、そうした“真の”特徴付けは“真の”問題だ。結論の出ない議論を生じさせるだけでなく、誤解を定着させてしまう。「そもそも彼らの愛は真の愛ではない」と言い出す人の真偽を、どう測れというのか? 信憑性に対する彼らの自信に、偽りはないのだろうか?
66 愛のなかには、過去の恋愛が招いたものもある。そうした愛は恋人を欺く。現在に映し出されているのは、過去に中断されたり、はじまらなかったりした物語の影。 恋人はその影を新しい愛と勘違いしてしまう。あなたが 「新しい 」と呼ぶものは、自分のなかに簡単に構築できるものではない。どこもかしこも、以前の住人たちの名残だらけ。
67 嘲笑––––口ひげの下のにやにや笑い–––––は、男が後ろに隠している盾のひとつ。愛もまた、そうした嘲笑を受ける。本当に恋に落ちると、すぐに顔に嘲笑が浮かびだす人もいれば、あざといにやにや笑いが次第に顔全体を覆って固まり、氷のように冷たくなって、凍りついてしまう人もいる。
68 長い交際で生まれた愛は、早すぎる終焉を迎えることもある–––––敗北感。交際中、あなたはまるでリハーサルをし過ぎて本番で何も発揮できない俳優のように、すべてを使い果たしてしまう……。
69 愛そのものや、恋に落ちることではなく、愛の恐怖を恐れている男もいる。
70 人が「驚愕した」と言うものに、必ずしも驚愕するとは限らない。ただ単に私たちが神話的なレッテルを貼って崇めたいと思っているだけで、実はごく普通の心の反射なのかもしれない。 一見狂気と思えず、しばらく理性が失われず、さらにその理性が生涯の傷にならなければ、それは驚愕したとは言えない。 こう言うのも、私が驚愕するとはどんなことかを知っているからではなく、驚愕しないことは何かを知っているからだ。
71 愛するための心の手段を持たない相手に恋焦がれる人の、絶望的な憂鬱。魂を傷つけるような絶望。人間であることの代数学、幾何学。
72 情熱を熟成させないと、どうしても短命な恋になってしまうようだ。どんな愛も、現在の時間の枠に閉じ込められない。 時空を歪めて瞬間移動するタイミングを決めるのは、愛なのだ。 あるいは別の見方をすれば、 愛の時空そのものが、歪められるタイミングを決める。詩的な論理だが、これは心の量子と呼べるのだろうか?
73 愛には、人生のなかで永久の記憶に変わるものもある。それは乗り越えも、飛び越えもできない。そうした愛は悲しみや痛みをもたらすわけでもなく、ただ解消されないままそこに留まる。そこと記憶の棺の中に、ずっと。
74 愛は決してはじまったときのままではいない。これこそ真の無限大。時間の流れにある、いくつかの不変のもののひとつ。
75 愛と別離には理由がある––––目は閉じている。
76 あらゆる場所を包みこむ不在は、愛の余韻。
77 自分のなかにある放火欲を愛と勘違いしている人もいる。でも彼らの魂を焦がすのは、表面的な言い訳を探す、自分を燃やしたいという欲望だ。記憶している顔の輝き、響き...… 封筒に手紙は入れられず、あなたには焦げた魂しか残らない。
78 情熱はもっとも危険な可燃物。
79 恋人からのある質問は、あなたにふたつの選択肢を与える––––真実を話すか、相手を満足させるような適当な答えを言うか。状況によっては、後にどちらかが別れの理由になるかもしれない。
80 私たちのなかで待機させていた愛が、しきりに舞台に上がりたがっている。適切な場所、適切な時間、適切な人。アリストテレスが言わなかったのなら、私が言おう。これが愛の三一致である。必ずしも満足できるものではない人生のルール。
81 遠くから見ている人は、いくつかの愛の物語をより身近に感じられる。
82 貪欲な心を持つ人の浪費的な恋愛と、浪費家の貧乏には共通点が多い。でも違うところはまったく違う。前者は欠乏に、後者は不足に悩まされる。
83 愛について語られる大半の言葉を思春期の戯言とみなす人々は、孤独について語られ、男らしさに磨きをかけた言葉にはなぜこれほど深みを感じるのかと問うような内なる強ささえ持ち合わせていない。思春期は、その恐怖でよく知られている。愛が愛であったとき。
84 私たちは愛し合っていた 違う?
85 結局、愛は孤独のまま。いつか、みんな去っていく。
翻訳者:アロン・エイジ
中尾隆聖(なかお・りゅうせい)
2月5日生まれ。東京都出身。
『ドラゴンボールシリーズ』フリーザ役、『それいけ!アンパンマン』ばいきんまん役、『BLEACH』涅マユリ役など数多くの作品でキーキャラクターを演じる。第25回日本映画批評家大賞 アニメ部門最優秀声優賞、第11回声優アワード 富山敬賞を受賞。声優だけでなく、舞台への出演および、演出も担当。声優界のレジェンド的存在。